「括弧に入れる」と読みます。もともとは哲学の言葉で、自分で価値判断することを保留する、という意味です。我々は日々「これはこういうもんだ」とか「良い・悪い」とか、色々なことを判断したり評価したりしているわけですが、それを一度保留してみるやり方です。このやり方は、心理的な苦悩や嫌な気持ちを和らげる考え方として役に立つことがあります。

心が苦しかったりつらかったり、あるいはイライラしているときに、その理由を考えてみると、「こうじゃないといけない」とか「これはこういうもんでしょ」とついつい考えてしまっていることがあります。

特に自分を責める声は要注意で、自分でも責めたくもないのに、つい責めてしまったりします。このように、心の中には色々な考え方が住み着いていて、内なる声と呼んだりします。

内なる声は、時に我々を振り回します。「こんなことでは○○失格だ」とか「誰にも必要とされていない」とか。でも、それって考えですから、本当にそうかはわかりません。つまり、評価や判断です。こういう時に括弧に入れることが役立ちます。

もちろん、括弧に入れてみたからといってそんなに変わらないなということもあるでしょう。でも括弧に入れてみて、それ以外の判断や評価があるんじゃないかと気づくことはとても大事です。それは、私たち一人一人が、これはこうだと思いながら生きてきた、自分の考える「世界」から一歩外に出ることに繋がるからです。

括弧にいれる作業は、活き活きとした生活に送る上で、誰にとっても大事なものです。そして、特に精神的に不調な時には心理的な視野狭窄に陥りがちですから、特に大切な考え方になります。

自分の考えや感じ方は自分にとってあまりに馴染み深く、生きていく上での前提になっていますので、一人では難しいと感じられるかもしれません。心理士として、そういったことを少しずつでも進めていける場を提供することを心がけています。

(S・S)