ここ7、8年ほど頻繁にヨガをやっています。近年、日本でもヨガが流行っているように感じますし、欧米でもヨガの健康に対する効果が注目され、さかんに研究も行われています。第3世代と呼ばれる新しい認知行動療法に位置づけられるマインドフルネスとの関連で、臨床心理学でもヨガの効果が注目されています。

ヨガが注目されている理由をいろいろ考えてみると、ひとつには欧米的な価値観から見た「東洋的神秘」に対するあこがれが大きいように感じます。それから、近代的・西洋医学的な薬物治療の人工的なイメージに違和感があり、漢方や食事の改善など自然なアプローチを好むような感覚があります。ヨガも代替療法的な色彩の強いものとして人々に訴えかけているようにも感じます。

私は、どちらかというと自然療法や東洋思想にはあまり関心がなく、よりシステマティックで人工的なものの方が好みです。安全でおいしくなるなら保存料や化学調味料もどんどん使ってくれと思うようなタイプなので、ヨガに熱中するようになったのは不思議ではあります。自然療法的、東洋思想的な観点から見たヨガの記事はたくさんあると思いますので、そうではない視点から感じていることを書いてみようと思います。

ヨガにはいろいろなポーズがあります。できなかったポーズができるようになると達成感を得られます。頻繁に身体を伸ばしたり、身体の重心を意識したりしながらヨガをやっていると、突然あるポーズができるようになる瞬間があります。この喜びは一番大きいと思います。

身体の柔らかさが必要なポーズでは、どうやったらもっと伸びるだろうかと考えるようになります。そうすると呼吸と筋肉の関係に気づいてきます。めいっぱい伸ばしたと思ったところから、息をゆっくり吐くと、1,2cmさらに伸びるのがわかります。そこで身体を止めたまま、息を吸うこともできますし、そこからゆっくり吐くと、さらに伸びていきます。こうして、よく言われる「息を吸うと緊張し、吐くとリラックスする」ということがよく理解できます。

ヨガをやって身体を伸ばし、いろいろな関節の可動域を広げると、その後の4,5時間くらいは、歩いていて身体の感覚がだいぶ違うことに気づきます。普段の狭い可動域とは違って、体中の関節があらゆる方向にひっかかりなく動く感覚です。個人的には、駅の階段を降りる時に一番これを感じます。自分がとても滑りの良いよくできたマリオネットになった感じです。これを「身体が軽くなった」とも表現するのだと思います。

これは、筋肉が緊張した状態と弛緩した状態の違いがよく理解できることとも言えます。身体のそれぞれの部分が、普段と違う感じがするので、身体のどこかで何か細かい兆候があるとすぐに気づくようになります。これによって病気やケガの兆しを早めに察知して対応することができ、よりうまく体調を整えることにつながるのだろうとおもいます。

身体を伸ばすタイプのヨガは初心者向けですが、長く続けているとそれでは飽き足らず、パワー系のポーズも取り入れるようになります。伸ばしながら筋力を使って姿勢を維持したり、筋力を使って身体を持ち上げたり逆立ちしたりします。腕や片脚を使って身体を持ち上げて維持するには、筋力というよりも、重心の位置の把握が重要です。

重心をうまく支えるようにすれば筋力はそれほど要りません。しかし、重心の位置を少しでもずらしてしまうと、ものすごい筋力が必要になってしまいます。このことから、自分の身体が今どうなっているか、重心はどこにあるかをミリ単位で把握し、目で見なくても感覚でつかむことが必要になってきます。身体をキャリブレーション(目盛付け)するような感じです。

これによって、空間内での重心の位置や姿勢をより正確に把握できるようになるので、日常動作の中でもケガをしにくくなり、身のこなしもきれいになり、スポーツをやっている人はパフォーマンスが向上するのではないかと思います。

私たちは心を扱う職業に就いていますが、これから高齢化社会が進んでいくにつれますます身体の健康は大事になると思います。これからも身体の感覚や調子への造詣を深めたいと思います。

(K.I)