情報の海の渡り方と、東京認知行動療法センターにおけるメンタルヘルス支援の考え方

少し前、インターネット上の医療情報を扱うサイトで、医学的に不正確あるいは明らかに誤っている情報が複数掲載されていることが問題となり、サイトは閉鎖になりました。その後も、一般の人が投稿する料理レシピのサイトで、乳児には与えてはいけない食材を用いたレシピが離乳食として複数掲載されているとして問題視されるという出来事がありました。

このようにウェブ上には健康に関わる情報に関して玉石混交の情報が入り乱れています。じっくり時間をかけて内容を検討すれば、その情報が信憑性の高いものであるかそうでないか気付くことができる場合もありますが、困っている時は情報を精査する余裕がない場合が多いものです。それに、読んだだけでは情報の良し悪しが判断できない場合だって多数あります。

このことはメンタルヘルスに関わる情報でも全く同じです。ウェブだけでなく、書籍も沢山ありすぎて、どれを手にとって良いのかわからないということが多いのではないでしょうか。そのような場合、まずは厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_compel.html)にあたるのが良いでしょう。

精神障害に関する情報について、実際の事例や専門家向けの情報など幅広く掲載されており、治療や支援の方法に関する標準的なやり方を知ることができます。標準的なやり方というのは、多くの人に効果があると認められている方法ですので、第一選択肢として検討する価値が十分にあるものと言えます(蛇足ですが上記離乳食に関する情報も「授乳・離乳の支援ガイド」というタイトルで厚生労働省のサイトに詳しく載っています)。

東京認知行動療法センターでの支援方法に対する考え方も同様です。標準的な支援方法を優先的な候補として、来談者の問題に対する支援のあり方を検討します。必要に応じて、来談者が抱える問題に関する解説が示された書籍などをお示しし、ご自宅で読んでいただいたり臨床心理士と一緒に読んだりすることで、問題の成り立ちや支援の方向性を理解する機会を設けることもあります。

なお、標準的というのは画一的なマニュアル支援を意味するわけではありません。来談者は現状を何らかの形で変えたいと思って当センターにおいでになりますが、変化をすることは時に勇気がいります。変化に対する準備状況は人によって様々です。ですから1人1人の動機づけにあわせた支援方法を検討し、目標を提案します。あるいは来談者によって学習スタイルも様々です。例えば行動をするのが好きな人にはロールプレイを多めに取り入れる、実用性を好む人には目標の立案など実生活に密着した課題の検討を積極的にしてもらう、といった工夫をします。

さらに、面接の中で導き出した解決策を宿題という形で来談者に持ち帰ってもらい、日常生活の中で実践していただくこともしばしばあります。なぜなら来談者の生活は面接室の中で繰り広げられているわけではないため、現実の世界でやってみてどうだったか、来談者一人でやってみてどうたったか、そうした試みが重要だからです。

要するに、当センターは、来談者が抱える問題の解決のために最も効果があると思われる方法を、一人ひとりの暮らしぶり、価値観、習慣、動機づけなどに合わせてアレンジした唯一無二の支援を提供する、ということになります。当センターの利用を検討なさっている方は安心してご利用いただきたいと思います。

(A.K.)