心理相談と精神科治療の違い

 今年2024年の元旦は忘れ得ぬ日になりました。車の運転中、ラジオのアナウンサーが「津波が来ます。逃げてください」と悲壮な声で繰り返すのを聞きました。能登半島での地震の被害の状況がニュースで刻々と入ってきました。そして、羽田空港での衝突事故。何が起きるのかわからない現実を目の当たりにしました。改めて考えてみると、私たちはいつ何時脅威に襲われてもおかしくない中で生きています。不安の中で生きているのが現実だと実感します。少し穏やかな時を過ごすと、平和であることが日常のように錯覚をしてしまうこともあります。しかし、その脅威が強烈であったり、繰り返し続いたりする環境の中では不安や恐怖の感情を抱いてしまいます。脅威のある環境下においては、不安や恐怖、さらには抑うつが生じることは、むしろ正常な反応です。他の人よりも少し繊細であったり、脅威を先取りしていたりする人は、このような反応が出やすいとも言えます。


 心理相談の場には、このような経験をして不安や抑うつを抱えて相談する方も多くいます。子どもにとっては、家族関係の対立などが脅威となります。学校での虐めは、深刻な脅威になります。その強弱はあるにしろ、不安や抑うつは、環境との関係で起きてきます。もし、問題が生じた初期に環境に働きかけて、その脅威が適切に改善されたならば、問題はなくなっていくでしょう。おそらく人間が成長すること、さらには日常生活を過ごすことは、このような脅威を感じ、それに対してどのように対処するのかを皆で考え、それを乗り越えていくことの繰り返しであると言えるでしょう。


 精神科や心療内科の治療では、不安や抑うつを「精神障害」として診断し、薬で治すことになります。それに対して心理相談は、病気とするのではなく、脅威に気づくこと、脅威を共有すること、脅威に協力して対処すること、それを乗り越えて対処法を一緒に探っていきます。解決しなければならない何らかの問題を抱えていたり、不安や抑うつなどで苦しんでおられたりする場合には、心理相談を気楽にご利用いただければと思っています。

【H.S】