LGBTQIA+?

 2010年代以降、LGBTに関する話題を目にすることが非常に多くなりました。今回東京で行われたオリンピックでは、200人近くのLGBTQであることを公表しているアスリートが出場したそうです。企業や学校などでもLGBTQへの対応が重要であると耳にすることが増えました。
 さて、LGBTとは、Lesbian、Gay、Bisexual、Transgenderの頭文字です。この4つについてはなんとなくわかっていても、よく付記されるQとは何か、またそれ以外にはどんなものがあるか、またLGBTの周辺の言葉などについて、少し解説してみたいと思います。

G(ゲイ):同性愛(Homosexual)という言葉は、過去には病気の名前とされていたため、あまり好まれず、Gay(陽気な)という言葉が代わりに使われるようになりました。日本では男性同性愛者のことを指すとされることが多いですが、上記のように同性愛者全般をもともと指しており、英語では女性に対してgayと言及することもあります。lesbianとgay womanでは、若干ニュアンスが異なるとする話もあります。

Q:QueerまたはQuestioningの頭文字です。Questioningは、自分の性的なあり方がどのようなものか模索中である状態の人のことで、若い年代では珍しくありません。Queerは、多数派である体制に抵抗する性的な少数者たちといった意味です。性に関わるマイノリティには、LGBTの4種類以外にもさまざまなものがあり、Queerのような幅広い人々を指すアルファベットを付け加えると、仲間はずれを防げることから、LGBTQのような表記が好まれています。

SOGI:性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の頭文字を取った言葉です。LGBTは、アフリカ系、ヒスパニック、アジア系といった個別グループを列挙した言葉ですが、SOGIは民族といった分類の観点を指す言葉です。多数派の人々はLGBTではないので、自分には関係ないと思ってしまうかもしれません。しかし、SOGIの観点では、多数派の人はヘテロセクシュアル(異性愛)のシスジェンダー(出生時に割り当てられた法的性別が、性自認と同一である人)と分類されます。SOGIは、日本で多く用いられている言葉のようです。

A(エイセクシュアル):同性に性的魅力を感じる人は同性愛者、異性に性的魅力を感じる人は異性愛者、両性に性的魅力を感じる人は両性愛者(バイセクシュアル)ですが、両性ともに性的魅力を感じない人は無性愛者(エイセクシュアル)となります。交際や結婚への圧力があると、疎外感を持ったり、自分はおかしいのではないかと悩んだりすることがあるようです。asexualは、英語の発音としてはエイセクシュアルが近いと思いますが、日本ではアセクシュアルという表記でも広まっています。英語圏では、略してエース(Ace)と呼ばれることもあります。
P(パンセクシュアル):両性に対して性的魅力を感じるバイセクシュアルと似ていますが、人の性別を2つだけとは考えず、すべての性別に対して性的魅力を感じる人のことをパンセクシュアル(全性愛)と呼びます。

ノンバイナリー:人の性別が2つではないと考え、性自認が男・女という枠組みにあてはまらないと感じている人のことです。2021年に歌手の宇多田ヒカルさんが、自分はノンバイナリーであると告白して話題になりました。日本ではこのような人のことを、2000年代からXジェンダーと呼んできていましたが、これは和製英語です。

I(インターセックス):身体的な性別は、性腺(精巣・卵巣)、性染色体、内性器、外性器、性ホルモンレベルなどで区別されますが、そのいずれかが男女の典型ではない人たちのことを指します。性分化疾患(Disorders of Sex Differentiation:DSDs)とも呼ばれます。男でも女でもない性だと自認する方もいますが、多くの方は、自分は多数派の男性または女性であると考えており、LGBTQの中に含まれることを好まないようです。

A(アライ):LGBTQを理解し共生しようとする多数派の人たちのことです。アライアンスallianceは同盟のことですが、同盟を結んでいる当事者の人や国を表す名詞形がアライallyです。LGBTQの当事者たちは、カミングアウトすることにリスクを伴うので、アライの人々がLGBTQフレンドリーな環境をつくっていく運動に協力することが大事であると言われます。ちなみに、定冠詞をつけた複数形の固有名詞としてのthe Alliesは、第2次世界大戦の連合国のことを指します。枢軸国はthe Axisです。このようにアライには悪者をやっつける正義の味方というニュアンスが含まれているかもしれません。

性的マイノリティ:LGBTQのように包括的に指したい場合に、性的マイノリティという表現もあります。セクシュアル・マイノリティという表現もありますが、英語のsexualは性愛のことを指すのでsexual minorityはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアルなどを指し、gender minorityはトランスジェンダーなどを指すようです。日本語では性という言葉でsexualityとgenderの両方を指せますので、包括的に呼びたい場合はセクシュアル・マイノリティよりも性的マイノリティの方が適切かもしれません。 (K・I)