行動することでも認知は変わる

認知行動療法はその名の通り「認知」と「行動」に焦点を当てた心理療法です。「認知が変わることで行動が変化する」というのは一般的にも理解しやすいでしょう。

一つの例として、「職場で自分が必要とされていない」と思っていたところが、「自分は実は重要な仕事をしているのだ」と仕事に対する認知が変わることが挙げられます。

そうすることで、自信を持って上司に意見ができるようになったり、前より生き生きと仕事ができるようになったりと、行動が変わってくることがあるかもしれません。これは「認知」の変化が「行動」に影響する例と言えます。

 しかしながら、「認知が変わる」というのは時に難しいことです。認知が100%変化するというのはなかなかないことですが、認知が柔軟になったり、新しい認知が付け加わったりすることさえ時には困難です。「自分は職場の中で重要な仕事をしているのだ」と頭で考えても納得できず、「そう思えないから困っている」という場合もあるでしょう。

人から言われても、「そういう考え方もあると思うのだけど・・・」となってしまう場合もあります。そういう場合に、無理に思い込もうとするのはあまりお勧めできません。無理に思い込もうとすることで、そうではないことがクローズアップされてしまい、逆にストレスになって疲弊してしまうことがあるためです。

 こういう場合に、「認知」だけに着目していてはうまくいかず、「行動」を変えてみるという方略を用いることがあります。例として、「会議で一つは発言をしてみる」ということを繰り返し、上司から「最近頑張っている」と褒められ、「自分の仕事が職場で認められている」と前よりも思えるようになるということが挙げられます。

これは「行動」の変化が結果的に「認知」に影響する例と言えます。認知行動療法では人間の内面を「認知」「行動」「感情」「身体」と大きく4つの要素に分けて、それぞれの要素がどのように影響しあっているかをみて、問題の解決に向けて取り組んでいきます。

長年悩んでこられたことでも、認知行動療法という専門的な枠組みで臨床心理士と一緒に問題を整理してみることで解決の糸口が見つかる場合もありますので、一度ご相談いただければと思います。

。(S.S.)